発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2006203165
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子宮癌の放射線治療後に発症した急性腹症2例を報告した.症例1は69歳女性で,増強する腹痛を自覚した.腹部CTで十二指腸壁の肥厚,及び肝臓周囲・骨盤内に腹水貯留を認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を行った.腹腔内に消化管穿孔は認められなかったが,膀胱頂部の破裂がみられた.膀胱壁は放射線療法の影響で著しく脆弱化しており,両側尿管皮膚瘻を造設して尿路変更を行った.症例2は77歳女性で,嘔気,腹痛,発熱が出現した.腹部CT像は,小腸は拡張し,腹水貯留を伴っていた.絞扼性イレウスの疑いで緊急手術を行った.腹腔内に明らかな絞扼部位は認めらなかったが,子宮体部と膀胱との癒着がみられ,剥離すると膀胱頂部に穿孔部位があった.脆弱化した穿孔部をトリミングし,膀胱壁を全層一層で単純閉鎖した.2例とも術後は良好に経過した.放射線治療の既往歴を持った急性腹症の患者に対しては,膀胱自然破裂も念頭に置いて諸検査を行うべきだと思われた
©Nankodo Co., Ltd., 2006