発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2005034228
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83歳男.食欲不振,体重減少を主訴とした.腹痛はなかったが,腹部全体が膨隆し,右上腹部に可動性を伴う半手拳大の腫瘤を触知した.ツベルクリン反応は低蛋白血症を伴う陰性で,胸部X線でも肺結核などを疑わせる明らかな所見はなかった.小腸造影では,回腸に造影剤の通過障害をきたす強い狭窄とその口側腸管の拡張を認めた.開腹したところ,術中細胞診class Iの腹水,腫瘤,腸管の拡張,腸管壁の浮腫,術中迅速病理で肉芽腫成分がみられた多数の白色結節を認め,小腸部分切除術を行った.腸間膜側にびらんと強い屈曲を伴う狭窄がみられたが,癒着による小腸の牽引や捻転は認められなかった.Ziehl-Neelsen染色では,赤紫色に染色された抗酸菌を認めた.術後は抗結核療法を行ない再発はない.腸結核は典型的な臨床所見を伴わない場合もあり,培養,病理組織所見,X線所見,抗結核療法に対する反応性などを駆使して診断することが重要であると思われた
©Nankodo Co., Ltd., 2004