臨床経験
心肺蘇生下胸部大動脈ステントグラフト内挿術で救命しえた特発性大動脈破裂
糸永 竜也
1
,
中井 真尚
,
島本 光臣
,
山崎 文郎
,
岡田 達治
,
野村 亮太
,
寺井 恭彦
,
宮野 雄太
,
村田 由祐
1国立循環器病研究センター 血管外科
キーワード:
胸部X線診断
,
心肺蘇生法
,
ステント
,
大動脈破裂
,
大動脈瘤-胸部
,
ステントグラフト内挿術
,
胸部CT
Keyword:
Aortic Rupture
,
Radiography, Thoracic
,
Stents
,
Aortic Aneurysm, Thoracic
,
Cardiopulmonary Resuscitation
pp.1151-1154
発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2015122717
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
67歳男性。朝9時頃に突然、背部痛が出現し近医に救急搬送された。CTでは著明な左胸水がみられたものの大動脈解離や大動脈瘤破裂は認めず、ドパミンとドブタミン投与で経過観察となった。しかし同日19時頃より病態が悪化、ショック状態となり、著者らの紹介となり搬送された。胸部造影CTを行なったところ、左側胸腔内と縦隔内に著明な液体貯留がみられた。また、第7胸椎レベルで大動脈胸側に造影剤の貯留が認められ、造影剤貯留部は大動脈以外に漏出したものと判断した。以上より、本症例は特発性大動脈破裂と診断され、治療法として緊急胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)が選択された。その際、手術は急速輸血で行っていたが、手術開始時の収縮期血圧が40mmHgまで低下したため、右鼠径部を切開して右大腿動脈からステントグラフトのシースを挿入した。だが、手術開始約10分で心室細動となり、心臓マッサージを行いながらGore-Tagを留置、留置予定部の大動脈径は中枢側26mm、末梢側23mmであり、ステントグラフトはTG2815とTG2610の2本を使用した。その結果、以後も電気的除細動にて心停止となり、心臓マッサージを継続しながらバルーンによるステントグラフト圧着を試みることで、鼠径創部閉鎖中には自己心拍再開となった(手術時間37分、心肺蘇生時間23分、輸血総量は赤血球濃厚液2520ml)。以上、循環動態が極めて不安定な破裂例においてTEVARは非常に有効であることが確認された。
©Nankodo Co., Ltd., 2014