胸壁・横隔膜の手術-その2 腫瘍
横隔膜原発性腫瘍と鑑別困難であった肝類上皮細胞肉芽腫
島崎 怜理
1
,
鈴木 秀海
,
森本 淳一
,
中島 崇裕
,
田川 哲三
,
岩田 剛和
,
溝渕 輝明
,
吉田 成利
,
中谷 行雄
,
吉野 一郎
1千葉大学
キーワード:
横隔膜
,
肝臓疾患
,
胸部X線診断
,
胸部疾患
,
神経組織腫瘍
,
鑑別診断
,
胸部CT
,
類上皮肉芽腫
Keyword:
Diagnosis, Differential
,
Diaphragm
,
Liver Diseases
,
Neoplasms, Nerve Tissue
,
Radiography, Thoracic
,
Thoracic Diseases
pp.990-994
発行日 2014年10月1日
Published Date 2014/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2015008980
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症例は75歳女性で、検診の胸部X線で左下肺野に横隔膜隆起を伴う腫瘤影が指摘された。胃粘膜下腫瘍が疑われ食道胃腸外科に紹介となった。上部消化管内視鏡検査、胃透視検査、造影CT検査による精査の結果、胃原発腫瘍は否定的で、横隔膜原発腫瘍が疑われ、呼吸器外科紹介となった。HbA1c 6.5と高値を認めた以外には、炎症や肺癌の腫瘍マーカー(CEA、CYFRA、Pro-GRP)等でも異常を認めなかった。胸部X線で左下肺野に横隔膜に限局的な隆起を伴う40mm大の腫瘤を認め造影CTで左横隔膜下の胃穹隆部頭側に37mm大の腫瘤を認め、内部は均一に造影された。冠状断像で腫瘍は胃と接しているが胃壁の層は保たれ、腫瘍は横隔膜と連続し観察された。胸腹部MRIで左横隔膜にT2強調画像で不均一な高信号を伴う腫瘤を認めた。PET-CTで腫瘍に一致して集積を認め悪性も否定できなかった。上部消化管内視鏡、胃透視検査で胃粘膜に異常は認められず、胃壁外からの圧迫を疑う所見で、術前診断は横隔神経由来の神経鞘腫を含めた横隔膜原発性腫瘍と考えられた。腫瘍は炎症により横隔膜と強固に癒着し剥離困難なため開胸手術へ移行した。肝臓部分切除を伴う横隔膜腫瘍切除術を行った。培養検査でEnterobacter aerogenes、Bacillus cereusが検出され腹腔内由来の感染症が疑われた。術後、抗生物質を予防的に投与したのみで経過良好で、肝類上皮細胞肉芽腫と診断された。
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