発行日 2013年7月1日
Published Date 2013/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2013316888
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33歳男性。21歳時に先天性アンチトロンビンIII(AT III)欠損症(type 1)と診断され、25歳時に右前腕深部静脈血栓症となった。その後、労作時倦怠感が出現するようになり、精査でIII度の大動脈弁閉鎖不全症を伴った最大径75mmの大動脈弁輪拡張と診断され、手術となった。手術開始前、AT III活性は108%であった。体外循環開始時のheparin投与前は78%と低下しており、AT III製剤を1500単位補充し、体外循環を確立した。以後、機械弁付きグラフトを使用してBentall手術を行ったところ、体外循環からの離脱、止血は容易で、問題なく手術を終了した。そして、術後4日目からdalteparin 5000単位/日の持続投与を併用し、経過は良好であったが、術後11日目に突然左側腹部痛と嘔気・嘔吐が出現した。造影CTを行なったところ、両側腎梗塞と脾梗塞を認めたため、dalteparinを中止して、heparin 15000単位/日の持続投与にかえた。更にビタミンK依存抗凝固因子(C、Sタンパク)の活性低下も血栓の一因と考え、warfarinを減量し、PT-INRを測定しながら1mg/2~3日の割合で増量した。その結果、heparinは漸減後に中止し、術後38日目、両側腎梗塞と脾梗塞の梗塞領域の縮小が認められた。目下、術後1年経過で血栓症の再発や人工弁の異常なく、患者は社会復帰している。
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