発行日 2011年8月1日
Published Date 2011/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2011338818
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53歳男性。2ヵ月前から血痰があり前医を受診、胸部単純X線像では左下肺野に結節影がみられ、肺膿瘍の診断にて抗生剤の投与が行われたが、一時的な陰影縮小、血痰改善であった。今回、気管支鏡下に擦過細胞診を行うも確定診断が得られず、著者らの施設へ紹介となった。入院時、胸部CTでは左下葉S8に25mm大の内部に低吸収域を有する腫瘤が認められ、近傍の葉間膜は肥厚し、気管支透亮像であった。一方、気管支鏡擦過細胞診はclass IIで、気管支吸引物の培養ではC群連鎖球菌、α型溶血連鎖球菌、Neisseria sp.が少量検出された。以上、これらの所見から肺癌の可能性も考え、手術を行ったところ、術中所見では腫瘤近傍上下葉間は炎症性の癒着がみられ、左肺S8の部分切除術が施行された。その結果、切除標本の病理組織学的所見では中心部に気管支を認め、過形成気管支上皮に覆われていた。また内腔には好中球浸潤と壊死組織を認め、その周囲には慢性炎症細胞の浸潤がみられ、壊死部にはグラム陽生を示す放線菌の集簇巣が認められた。目下、患者は手術から第6病日目に前医に転院後、1年が経過したが再発は認められていない。
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