発行日 2011年7月1日
Published Date 2011/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2011292658
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74歳女。3ヵ月前より嗄声で特発性反回神経麻痺と診断され通院中、上腹部痛を主訴に内科受診し、精査の胸部CTで大動脈弓部直下に左肺動脈を狭窄する腫瘤性病変を指摘された。MRIでは大動脈弓下を中心に左肺門付近まで達する最大5cmの腫瘤を認め、診断目的に腔鏡下生検を施行した。腫瘤は白色調で、左肺上葉の一部が癒着しており、肺癌の直接浸潤を疑ったが、容易に剥離可能で肺の胸膜直下に病変は確認できなかった。腫瘤の一部を採取し、術中迅速病理検査では線維化と診断され、悪性所見を認めず手術を終了した。病理組織所見では紡錘型細胞を主体とした細胞の増殖と間質の線維化を認め、核分裂像もみられた。免疫染色では抗平滑筋アクチン、ビメンチンが陽性、S-100、デスミン、CD34が陰性で、平滑筋由来の腫瘍が疑われた。患者への侵襲および本疾患の根治性を考慮して手術は施行せず、放射線治療を選択して計40Gy照射した。しかし、生検後3ヵ月で小脳を含む多発脳転移を来たし、転移巣切除を行ったが、全身状態が悪化して追加治療困難となり、残存脳転移巣が増大して生検後5ヵ月で死亡した。
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