発行日 2011年7月1日
Published Date 2011/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2011292652
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79歳女。3年前の検診で胸部異常陰影を指摘され、心膜嚢胞の診断で定期検査を受けており、拡大は認めていなかった。今回当院紹介となり、胸部MRIで上行大動脈背面に辺縁平滑・境界明瞭な嚢胞性腫瘤を認め、T1強調画像で高信号、T2強調画像で軽度高信号であった。引き続き経過観察としたが、検査8日後に発熱と右背部の重苦感が出現して深呼気困難となり救急搬送された。胸部CTで嚢胞は拡大し、右肺動脈、右上肺静脈、右気管支を圧迫していた。血液・生化学検査では白血球増多、炎症反応亢進を認め、感染ないし炎症を契機に腫瘤が急速に拡大したと考え、抗生物質を投与すると共に準緊急開胸術を行った。心膜を切開したところ、混濁した心嚢液が少量貯留し、灰白色の腫瘤が上行大動脈の右背側で右肺動脈に騎乗していた。剥離の過程で嚢胞壁が穿破し、内容液を吸引した後に全摘した。病理組織所見で内腔は線毛円柱上皮に覆われ、壁内に軟骨組織を認め、気管支原性嚢胞と診断された。術後経過は良好で、3年経過現在、再発はない。
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