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症例1(21歳女).時折の背部痛があるが自然に軽快していたが,胸部X線像で左下肺野に液面形成を伴う嚢胞を認めた.暗赤色の緊満した嚢胞はS6~S9+10へと下葉全体に及んでおり左下葉切除を施行した.嚢胞の大きさは12×8×7cm,壁の厚さは2~3mmで粘稠の液体を含んでいた.可視範囲の気管支との交通は認められなかった.嚢胞内腔面は線毛円柱上皮に覆われ,上皮下に線維組織の増生とリンパ球の浸潤が見られ,多数の赤血球と白血球を認めた.症例2(47歳女).胸部X線像上異常影がみられ胸部CTおよびMRIで左上・下葉間に6×4cm大の腫瘤を認めた.腫瘤は辺縁整で肺への浸潤はなく,内部は均一な低吸収像,脂肪成分が多い葉間発生の腫瘤を示し,脂肪・蛋白含有が多いと考えた.約5cmの腫瘤が左S4+5中枢にあり気管支と近接し,肺動脈に高度癒着していたため左上葉切除+肺動脈形成術を施行した.壁2~3mmの舌区の嚢胞と気管支との交通は認められなかった.症例3(17歳女).13歳時に左肺炎と診断され抗生物質の治療で液面形成のあるX線像を呈したが治癒し肺化膿症と診断された.胸部X線では楕円形の線状陰影となっており胸部CTで左下葉に壁が肥厚した嚢胞を認めた.手術時S6~S9の一部を占拠する壁が肥厚した嚢胞を確認,正常と思われるS8~S10を残す可能性を考え嚢胞の約半分を切除した.気管支との直接の交通はなかったが嚢胞底に肺と連続する針穴ほどの交通が数箇所あり,縫合閉鎖しても気漏が多く肺温存を断念し胸腔鏡補助下に左下葉切除を施行した.嚢胞の大きさは13×10×2cm,壁の厚さは3~4mmで壁に白色の膿状の付着物,石灰化,数ミリ大の結節を認めた.嚢胞内腔面は線毛円柱上皮におおわれ,上皮下には気管支腺,気管軟骨が存在していた
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