発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2015122728
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66歳男性。人間ドックの胸部CTにて前縦隔腫瘍の指摘を受け、経過観察されていたが、今回、前立腺癌に対する治療終了後に縦隔腫瘍の評価目的で著者らの施設へ紹介となった。入院時、検査所見では腫瘍マーカーはSCCの軽度上昇が認められたのみで抗アセチルコリン受容体抗体は陰性であった。一方、胸部CTでは前縦隔および左腕頭静脈腹側に1.5cm大の結節影が認められたが造影効果は乏しく、また前縦隔と上行大動脈腹側にも2.0cm大の結節影が認められたが、同じく造影効果は乏しかった。以上、これらの所見を踏まえて、更に胸部造影CTでのCT値が40~50HUで、いずれも造影効果は認めず、内部均一であることから、本症例は嚢胞を伴う疾患が疑われた。加えて6年前と比較して、増大も認められたため診断的治療目的で切除手術の方針となった。右胸腔鏡下に手術を行なったところ、術中所見では前縦隔に病変は視認できず、腫瘍と一塊に右胸腺摘出術が施行された。その結果、摘出した右胸腺中央部には嚢胞性病変が認められ、穿刺吸引では混濁した乳白色内溶液がみられた。以後、慎重に探索したところ、左胸腺内上部にも病変が確認され、左胸腺部分切除術を施行、術中病理所見で病変は気管支嚢胞と考えられたが、周囲組織には悪性所見は認められなかった。尚、2病変ともに嚢胞壁は異型性に乏しい気道上皮で被覆されており、気管支嚢胞と診断、患者は第4病日目に退院となった。
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