発行日 2008年5月1日
Published Date 2008/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2008208426
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74歳男。2004年にA型急性大動脈解離に対して上行弓部置換術を施行した。経過良好で、人工血管吻合部中枢側に偽腔は認めず、末梢側偽腔も菲薄化してほぼ閉鎖し、術後19病日に退院した。術後約4ヵ月に意識レベル低下で救急搬送され、JCSII-20、血圧130mmHg台、SpO2 96%で胸部苦を訴えた。X線で左側大量胸水貯留を認めたが、CTはショック状態のため造影剤が停滞して大動脈が造影されず、血圧が低下して心肺停止状態となり死亡した。病理解剖により大動脈周囲の新しい血腫を上行大動脈後壁側に認め、同部位の動脈壁に解離が生じていた。破裂は吻合に用いたプレジェットの縁で生じており、それが人工血管周囲から上行大動脈周囲さらに右心房左側面に続き、右心房内腔に突出する血腫を認めた。その血腫が心外膜の脂肪組織内に広がり、左胸腔に連続して2300mlの純血性胸水の貯留に至っていた。心嚢内には心嚢水貯留を認めた。以上により、上行大動脈解離腔破裂とそれによる上行大動脈周囲から右心房周囲、右心室外膜内血腫ならびにその左胸腔内穿破による血胸と診断した。
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