特集 Wnt協奏曲:新たな活性化機構と他の増殖・分化シグナルとの協調による形態形成
せるてく・あらかると
20年前のWnt研究の現場はどうだったか
柳川 伸一
1
1京都大学ウイルス研究所
pp.406-406
発行日 2013年3月22日
Published Date 2013/3/22
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私は,1992年初頭から1994年の中ごろまで,スタンフォード大学のRoel Nusseラボへ留学した.数年間MMTV(mouse mammary tumorvirus)のLTR(long terminal repeat)変異株による白血病発症機構の解析に携わっていたこともあり,int-1とWingless(Wg),Wnt-1ノックアウト(KO)マウスなどの論文を読み,Wnt に興味を持っていた.1990年,NusseがNetherland Cancer Inst(Nusseはオランダ人)からスタンフォード大に移籍して2年後のことである.当時,Nusseラボはポスドク2名,オランダの大学院生3名,ハーバード大のPerrimonラボの大学院生1名と中規模のラボであった.また,ハエではPerrimonやBasler,KOマウスではMcMahon,そしてカエルではMoonなどのラボが先に進んでいる印象だった.NusseラボはHS(heat shock)-Wgを用いたトランスジェニック(Tg)-flyとハエのSchneider S2細胞でWgを強制発現させる系を持っていた.私の最初の研究テーマは,HS-Wg Tg-flyから野生株を対照として,サブトラクションを行ったcDNAライブラリーを作製することによりエクトピックなWg発現により誘導させる遺伝子を検索することであった.今ならマイクロアレイを行えるが,ハエの全ゲノム情報もない時代で1年以上,結果が出ない日々が続いた.
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