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2007年,スウェーデンのLötvall博士は細胞小胞顆粒(エクソソーム,Exosome)中にmicroRNA(miRNA)が存在することを発見した.それはエクソソームを介したmiRNAの細胞間移送による未知の情報伝達機構が存在することを彷彿とさせる衝撃的な事実だった.この発見を契機に,ホルモンのように細胞外へ放出される分泌型miRNAや,ナノサイズのエクソソームによる生命現象のマイクロマネジメントの解明に対する挑戦が世界中で活発化し,その実態が徐々に露になりつつある.直径は50〜1,000nmと幅広い大きさを持つ顆粒の中にエクソソームが存在するが,その起源を紐解けば,もともとは細胞内の老廃物を細胞外に捨てるゴミ箱だったことが,小さな微生物から我々ヒトにまで保存されていることからも想像できる.しかし,進化とともに遺伝子の発現調節を司るmiRNAなどの情報伝達物質を内包することで細胞間,組織間でのコミュニケーションツールとしての役割を発達させてきたのではないだろうか.2011年9月,Lötvall博士の呼びかけで,ISEV(InternationalSociety for Extracellular Vesicles)が設立された(http://www.isev.org/). そして2012年4月には第一回ISEV国際会議がスウェーデンで開かれるなど,世界はまさにエクソソームに席巻されようとしている.エクソソームはヒトの血液だけでなく,唾液,汗,尿,精液,リンパ液,脳脊髄液など,あらゆる体液に存在することから,エクソソームそのものによる疾患の診断に期待が寄せられている.また,米国の複数のベンチャー企業が,がん特異的エピトープなどを膜表面に発現させたエクソソームをバイオマーカーや治療に応用する動きを見せており,今後エクソソーム研究の動向から目が離せない.本特集では,こうしたエクソソームやエクソソームが運ぶ核酸やタンパク質などによる疾患のマイクロマネジメントの実態に迫りたい.
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