特集 血液脳関門:BBBの概念提唱から百年の時を越えて捉えたその実体
基礎の基礎
寺崎 哲也
1
1東北大学 大学院薬学研究科薬物送達学分野
キーワード:
比較解剖学
,
血液脳関門
,
血管内皮
,
生物進化
,
神経膠
,
毛細血管
,
密着結合
,
タンパク質輸送
,
内皮細胞
,
血液髄液関門
Keyword:
Capillaries
,
Anatomy, Comparative
,
Blood-Brain Barrier
,
Endothelium, Vascular
,
Biological Evolution
,
Neuroglia
,
Tight Junctions
,
Protein Transport
,
Endothelial Cells
pp.930-934
発行日 2013年8月22日
Published Date 2013/8/22
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哺乳類において,血液脳関門(blood-brain barrier;BBB)は脳毛細血管内皮細胞がその形態学的実体であり,内皮細胞同士が密着結合(tight junction;TJ)で連結している.「関門」という名前から「脳と循環血液を隔てる構造壁」というイメージが古くから定着している.しかし,BBBには,血液中のグルコースやアミノ酸などの栄養物質を脳内へ供給する「脳支援システム」としての輸送機能や,血液中の種々の薬物の脳への移行性を能動的に排除するとともに脳内の不要な物質を排除する「脳防御システム」としての排出輸送機能という重要な役割を担っている.特に,後者については過去20年の研究によって大きく進歩した.BBBの働きは脳の病態によっても変化し,脳の高次機能を維持するために脳と血液の間の物質交換を制御する「動的インターフェース」としての新しい概念に置き換える必要がある.本稿では,できるだけ幅広い読者に興味を持っていただくことを願って,BBBの進化や動物間比較などを含め,基礎的な知見を概説した.
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