特集 神経細胞特異的な翻訳制御:鍵を握るRNA結合タンパク質/mRNA輸送/non-coding RNA
基礎の基礎
武井 延之
1
1新潟大学脳研究所 分子神経生物学
キーワード:
神経成長因子
,
ペプチド鎖延長
,
シグナルトランスダクション
,
遺伝子発現調節
,
ニューロン
,
リン酸化
,
タンパク質生合成
,
終止コドン
,
Eukaryotic Initiation Factor-2
,
Eukaryotic Initiation Factor-4F
,
TOR Serine-Threonine Kinases
Keyword:
Gene Expression Regulation
,
Neurons
,
Peptide Chain Elongation, Translational
,
Phosphorylation
,
Protein Biosynthesis
,
Signal Transduction
,
Eukaryotic Initiation Factor-2
,
Codon, Terminator
,
Nerve Growth Factor
,
Eukaryotic Initiation Factor-4F
,
TOR Serine-Threonine Kinases
pp.642-645
発行日 2012年5月22日
Published Date 2012/5/22
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遺伝子発現とはゲノムDNAからmRNAが転写(transcription)されて,mRNAがタンパク質に翻訳(translation)される一連の流れを言う.転写は核酸同士の相補性を利用した過程であり,様々な調節機構はあるものの,それ自体は比較的シンプルな反応である.一方,翻訳は核酸情報をアミノ酸のつながり(ペプチド鎖)に書き換えるという,より複雑なプロセスを担っており,そのため必要な要素やステップが多い. 翻訳は開始(initiation),伸展(elongation),乖離〔release,終結(termination)とも言う〕の3つのステップから成っている.開始はmRNAがリボソームに運ばれ,そこで開始コドンであるAUGをメチオニルtRNAime(t MettRNAiMet)が認識する過程である.伸展はコドンに対応した種々のアミノアシルtRNAがリボソームに運ばれ,ペプチド鎖がつながっていく過程を指す.最後の乖離では終止コドンのUTGをアミノアシルtRNAと似た立体構造を持つeRF1(Eukaryotic release factor 1)が認識し,ペプチド鎖をリボソームから乖離させる過程である.それぞれのステップで翻訳因子と呼ばれる一群のタンパク質が相互作用しながら翻訳を調節している.翻訳は生命体に必須のプロセスであるので,そのメカニズムはすべての細胞に共通して備わっている.しかしながら翻訳調節機構に関しては神経細胞に特有の(あるいは特徴的な)ものもある.本稿ではまず普遍的な翻訳の各ステップについて概説し,次に神経細胞での特徴について触れたい.
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