特集 性決定分化の制御システム:疾患性差・性転換をもたらす♂化・♀化のせめぎ合い
基礎の基礎
田中 実
1
,
諸橋 憲一郎
2
1基礎生物学研究所 生殖遺伝学研究室 准教授
2九州大学大学院医学研究院 分子生命科学系部門 性差生物学講座 教授
pp.146-150
発行日 2013年1月22日
Published Date 2013/1/22
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有性生殖を介した世代交代は生物が長い時間を生き抜くためには必須のプロセスである.それゆえここに,運動性に富む配偶子を産生する「雄」と栄養に富む配偶子を産生する「雌」がその進化の過程で誕生してきたと考えられている.生物学で言う「性」とは,この有性生殖を達成するために生物が示す二型性のことを言い,生物は自身の生活史や置かれた環境に合わせて有性生殖を達成しなくてはならないがゆえに,その生物種ごとに特徴ある性差(雄性と雌性の差)を確立してきたと言えよう.そしてこの性差は,遺伝子発現レベルから細胞・組織構造,内分泌・生理・行動レベルにまで非常に広範囲に表れる.したがって「性」の現象とそのメカニズムを総合的に理解するには,発生学,細胞生物学,分子生物学,内分泌学などの様々な角度からの理解を必要とする.つまり,「性」研究は学際的研究分野としての特徴を内包しているのである.
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