特集 毛髪再生のメディカルサイエンス:毛は生やせるか?
基礎の基礎
西村 栄美
1
1東京医科歯科大学 難治疾患研究所 幹細胞医学分野
pp.1022-1025
発行日 2013年9月22日
Published Date 2013/9/22
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皮膚は,個体を外界から隔てて護るなど,生命維持において重要な役割を果たしている.毛包(毛嚢)は,哺乳類が毛を生やすために発達させた皮膚付属器官で,その発生過程によく似た再生過程を,自発的かつ周期的に繰り返す.毛包には種々の組織幹細胞が内蔵されており,表皮の角化細胞や色素細胞の供給源となるなど,“幹細胞の貯蔵庫”としても重要な役割を果たしている.毛包は,毛包幹細胞とそのニッチの相互作用によってその再生を繰り返すことで毛を生やし続けるが,男性型脱毛症(androgenetic alopecia;AGA)などの脱毛症において,その再生能力が低下し,次第に毛包自体も小さくなることが知られている.その発症機序に基づいた育毛剤が開発されると同時に,新しく毛包自体を作る試みも盛んになされている.はたして自毛を自在に生やせる日はやってくるのだろうか? 本稿では,本特集にできるだけ幅広い読者が興味をお持ちいただけるよう,毛髪の役割と進化について簡単に述べたうえで,毛髪再生の基礎と臨床,そして毛髪再生医学の最前線から将来への展望まで,本特集で紹介する世界をリードする最先端の研究ついてその概要とつながりを解説する.
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