特集 新たな創薬ターゲットとしてのトランスポーター:明らかになるその構造と新機能
特集を読むまえに 基礎の基礎
金井 好克
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1大阪大学大学院医学系研究科 生体システム薬理学
pp.522-526
発行日 2012年4月22日
Published Date 2012/4/22
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トランスポーター(輸送体)は,低分子化合物の生体膜透過を可能にする膜タンパク質である.生体膜脂質二重層の疎水的環境を通過できない親水性化合物の膜通過に必須の分子として認識されていたが,最近では長鎖脂肪酸やコレステロールなどの脂質もトランスポーターによって輸送されることが明らかになり,低分子化合物全般の体内動態の支配因子として位置づけられている .トランスポーターの研究は,図1に示すように,膜輸送現象の生理学的あるいは酵素学的な定式化に始まり,分子クローニングを経て,現時点ではポストゲノムの解析技術を駆使して,未知のトランスポーターの探索,輸送機能の構造基盤の解明,トランスポーターの生体内での機能の理解,そしてトランスポーターの知識に基づく生体機能の新たな理解に向けて研究が進行している.その成果のもとに,個々のトランスポーターの薬効標的としての意義や体内物質動態における役割が明らかになっていく.さらに,生体システムの中でのトランスポーターの振る舞いを定量的に捉え,システムバイオロジーに組み入れる研究が開始されている(図1).このような基盤のうえに,トランスポーターを分子標的と見据えた創薬が展開されている.本特集では,この研究の流れの中での異なったステージで特徴のあるトランスポーターを取り上げた.加えて,新たなトランスポーター研究を推進する解析技術についてもフォーカスしている.
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