特集 ターゲット・オブ・mTOR:明らかになるmTORの標的分子と生理機能
特集を読むまえに 基礎の基礎
前田 達哉
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1東京大学分子細胞生物学研究所 高難度蛋白質立体構造解析センター膜蛋白質解析研究分野
pp.1306-1312
発行日 2012年11月22日
Published Date 2012/11/22
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mTOR(mammalian target of rapamycin,もしくはmechanistic target of rapamycin)は,その名のとおり,免疫抑制剤/抗がん剤ラパマイシンの細胞内標的分子として見いだされたセリン/スレオニンキナーゼである.mTORは,細胞が栄養状態や増殖因子,ストレスなどのシグナルを統合し,成長と代謝とを制御するためのネットワークにおいて枢要な働きを担っている.mTORならびにmTOR経路はその構造(構成因子)や機能も真核生物に広く保存され,酵母から哺乳類まで様々なモデル系の利点を活用した研究が進められている.その結果,この「基礎の基礎」で概説するように,細胞レベルにおけるmTORの制御ならびに機能に関する理解は大いに進み,研究の重心はすでに個体レベルの生理/病理現象におけるmTORの機能を理解することに移りつつある.本特集では,mTORの制御下にある多彩な生理現象のうち医学的にも関心の高いトピックを選び,その分野のスペシャリストに,今まさに進められつつある研究の現状を紹介していただいた.今後の研究の方向性や臨床応用の可能性についても多くの示唆を含んでいるものと期待している.
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