特集 神経免疫:多発性硬化症、脳虚血、アルツハイマー病、精神疾患における炎症反応と免疫異常
特集を読むまえに 基礎の基礎
山村 隆
1,2
1国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 免疫研究部長
2国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 多発性硬化症センター長
pp.1014-1017
発行日 2011年9月22日
Published Date 2011/9/22
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神経系と免疫系は生体の恒常性を維持する基本的な調節系で,それぞれの仕組みを解明する神経科学と免疫学は現代生命科学を支える重要な2本の柱である.しかし,医学・生物学で手がつけられずに放置されている重要な問題の中には,神経系と免疫系にまたがるものが多く,そこに既存の学問の枠組みを超えた融合領域̶神経免疫学(Neuroimmunology)の存在意義がある.本特集では神経学と免疫学の境界に位置する問題の中から,神経・免疫・内分泌ネットワーク,脳内炎症動態,神経・精神疾患における免疫異常,神経疾患に対する免疫療法などに焦点を当て,最先端の成果を紹介する.̶脳内免疫システムや神経と免疫の相互作用を正しく理解すれば,有効な治療法のない神経疾患や精神疾患の本質に迫るような研究や,画期的な治療薬の開発につながるブレイクスルーがあるかもしれない̶筆者は長年このように信じて研究を進めてきたが,この予想は裏切られることなく,神経科学と免疫学の融合領域は急速に発展してきた.本特集が研究の潮流を理解する一助になれば幸いである.
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