特集 Hippo pathway:癌・細胞死・再生の新たな鍵を握る器官サイズ制御シグナル
特集を読むまえに 基礎の基礎
畑 裕
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1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 病態代謝解析学分野
pp.910-917
発行日 2011年8月22日
Published Date 2011/8/22
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Hippo pathwayという言葉を,本特集で初めて目にし,耳にする人も少なくないだろう.シグナル伝達系と言えば,cAMPやCa2+シグナル,Ras-MAPK,あるいはWntシグナル,Notchシグナルなど,数多くあり,様々な角度から研究がなされている.その中にあってHippo pathwayは新参者だ.これまでにも機会あるごとに「新しいシグナル伝達系Hippopathway」と強調してきた.とは言っても,すでに10年弱の研究の歴史がある.限られた数の分子から構成される直線的でわかりやすいシグナル伝達系として登場したが,次々と新しい構成分子が見つかり,他のシグナル伝達系とのクロストークも加わり,今では複雑な様相を呈してきている.それだけに細胞内シグナルネットワークの中で占める範囲が広がり,存在感が増している.生理的,病理的な役割も,当初想定されたよりも多岐にわたることが明らかになっている.「基礎の基礎」では,Hippo pathwayの登場とその後の研究の発展のあらましを紹介し,Hippo pathwayのシグナル伝達経路について概説する.その後で,哺乳動物のHippo pathwayに焦点を当てて,基本構築のみでは捉えきれなくなっている現状を示す.続いて,Hippo pathwayがどのような生理機能を果たすかをまとめ,破綻するとどのような病気に結びつくことになるかを議論する.本稿が,Hippo pathwayの全体像における各論の位置づけと,Hippo pathway研究が持つ意義を明らかにするのに役立ち,本特集を読み進める意欲を高める一助となることを願っている.
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