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COVID-19 流行の日本の輸入感染症に対する影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は人々の居住地域での生活だけではなく,国際的な移動にも大きな影響を及ぼしている.訪日外国人旅行者数,出国日本人数は2019年までの数年間,徐々に増加した(図1)1).しかしCOVID-19の流行とともに2020年から段階的な入国制限が行われ,同年12月には一時すべての国・地域からの外国人の新規入国が原則停止された.2023年1月現在は個別の外国人観光客の受け入れが解禁されるまでに至ったが,2020年から続いた日本への渡航制限はこの間の渡航者数に大きく影響しており,2019 年の訪日外客数が約3,200 万人であったのに対し,2020 年は約410 万人,2021年は24万人と急激に減少した. 国際的な渡航の制限は日本の輸入感染症の発生動向にも影響を及ぼしている.マラリア,デング熱,腸チフスは日本において基本的に海外からの輸入感染症であり,これらの日本での報告件数は2020年以降急激に減少した.2015年から2019年にかけての年間報告数はマラリアで40〜60,デング熱は200〜460,腸チフスは20〜50件程度だったが,2021年にはそれぞれ29,8,4件に減少している(図2)2).しかし,その後の渡航制限緩和に伴い,2022年には報告数がリバウンドする傾向がみられた.一方でCOVID-19の流行はこうした輸入感染症の診療に今までにない問題を引き起こす可能性がある. この3年間ほど輸入感染症を診療する機会のなかった医師も,今後は遭遇することがあるかもしれない.それではCOVID-19流行下で輸入感染症を診療するにあたり何を意識すればよいのだろうか.本稿では日本における代表的な輸入感染症がCOVID-19で受けた影響について述べ,ポストCOVID-19時代における輸入感染症診療の注意点を考えてみたい.
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