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ベンゾジアゼピン(BZ)系睡眠薬は従来から使用されてきた睡眠薬であり,半減期の長さによって超短時間作用型のトリアゾラム,短時間作用型のブロチゾラム,ロルメタゼパム,リルマザホン,中間作用型のフルニトラゼパム,エスタゾラム,ニトラゼパム,長時間作用型のクアゼパム,フルラゼパム,ハロキサゾラムに分けられる(表1)1).BZ系睡眠薬はベンゾジアゼピン骨格を有しており,A型γ-アミノ酪酸受容体(GABAA受容体)に作用する.GABAA受容体はαが2個,βが2個,γが1個のサブユニットの組み合わせで形成されるイオンチャネル型の受容体である.サブユニットとしてα1~α6,β1~β3,γ1~γ3が確認されている.これらの組み合わせはさまざまであるが,中枢神経系に最も多く分布するのは,α1β2γ2,α2β3γ2,α3βnγ2であるといわれている2).GABA自体は,αとβサブユニットの境界領域に結合するが,BZ系睡眠薬はαとγサブユニットの境界領域に結合し,GABAA受容体が活性化され,クロライド(Cl−)チャネルが開口することで細胞内にCl−が流入して過分極になった結果,神経活動の抑制が起こり睡眠をもたらす3)(p.36図2参照).BZ系睡眠薬のはたらきは,αサブユニットの関与が大きく影響しており,α1は鎮静・催眠作用,抗痙攣作用,前向性健忘,依存形成に関与し,α2やα3は睡眠作用,抗不安作用,抗うつ作用,筋弛緩作用,α5は筋弛緩作用,学習・記憶に関わるといわれている.BZ系睡眠薬はいずれのサブユニットにも結合するが,作用の強さはα1を介する作用が最も強いと考えられている(表2)2).
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬はベンゾジアゼピンに類似した作用をもつ薬剤であり,そのほとんどがZの文字から始まることからZ-drugとよばれている.海外ではzaleplonという薬剤も使用されているが,国内ではゾルピデム,ゾピクロン,エスゾピクロンが使用可能であり,いずれも超短時間作用型睡眠薬に属する(表1)1).Z-drugもGABAA受容体に作用するが,αサブユニットとの関わりは薬剤によって異なる.ゾルピデム,ゾピクロンはBZ系睡眠薬と同様にα1を介した作用が強いが,エスゾピクロンはα1よりもα2,α3を介した作用が強いことから,抗不安作用が睡眠薬としての効果をもたらしている可能性が考えられている(表2)2).
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