薬局 76巻2号 (2025年2月発行)

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特集　今こそ知りたい！ JAK阻害薬　適応の拡大を追いかける＆免疫系に強くなる

特集にあたって吉村　昭彦 76巻2号 , 2025年2月 , pp.162-163

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免疫の地図 76巻2号 , 2025年2月 , pp.164-165

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免疫の基礎の基礎①　サイトカインによる情報伝達と炎症のしくみ吉村　昭彦 76巻2号 , 2025年2月 , pp.167-171

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Key Points

サイトカインとは細胞間の情報伝達分子である．

サイトカインを産生する細胞，受ける細胞は多種多様であるが，免疫系で重要な産生細胞の代表はマクロファージ，樹状細胞とヘルパーT細胞である．

サイトカインの主なシグナル伝達経路がJAK-STAT経路．JAKはチロシンキナーゼ，STATは転写因子であり，JAKによってリン酸化されて核に移行してサイトカインの機能を伝達する．そのほか，Ras-ERK経路やPI3キナーゼ経路も活性化される．

サイトカインのシグナルはSOCSなどにより厳密に制御される．

免疫の基礎の基礎②　全身のリンパ組織を巡る免疫の旅片貝　智哉 76巻2号 , 2025年2月 , pp.172-176

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Key Points

免疫細胞は血球系細胞であり，血管やリンパ管を介して全身を循環し，組織内を移動する能力も高い．

リンパ器官は，リンパ球が集積する臓器や組織であり，リンパ球の多くはそれらを巡って機能している．

リンパ球は一次リンパ器官で産生され，二次リンパ器官では獲得免疫応答を誘導する．

免疫の基礎の基礎③　人体の各臓器からみる免疫・バリアのしくみ椛島　健治 , 赤木　有沙 76巻2号 , 2025年2月 , pp.177-181

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Key Points

各臓器は外部環境に適応した独自の免疫・バリア機能を備え，病原体や異物から身を守りつつ，常在菌との共生や免疫応答の適切な調整を通じて生体の恒常性を維持している．

各臓器の免疫・防御機構の理解は，感染症やアレルギー，自己免疫疾患の病態解明や治療開発に寄与する．

免疫の基礎の基礎④　T細胞のはたらきといろいろなT細胞の特徴久保　允人 76巻2号 , 2025年2月 , pp.183-188

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Key Points

ヘルパーT細胞は，宿主を生物の侵入から守るため，適応免疫応答のネットワーク形成において中心的な役割を担っている．

CD4 T細胞は機能的観点から，抗体産生に関わる濾胞ヘルパーT（T_FH）細胞とエフェクター機能をもつエフェクターT細胞，抑制的制御を担う制御性T細胞（Treg）の3つに大別される．

ヘルパーT（Th）細胞において，T_FH細胞とエフェクターT細胞のいずれかになるかの運命決定は，ナイーブT細胞が抗原刺激を受けたときに，転写因子Blimp1とBcl6のいずれを発現するかで制御されている．

エフェクターT細胞は，さらにサブセット特異的マスター転写因子を発現することで，Th1/Th2/Th17サブセットへと分化する．本稿では，CD4 Tヘルパー細胞サブセットとヒト疾患との関係について紹介する．

免疫の基礎の基礎⑤　B細胞のはたらきと抗体のヒミツ北村　大介 76巻2号 , 2025年2月 , pp.189-195

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Key Points

1個のB細胞がB cell receptor（BCR）を介して抗原に結合すると，活性化・クローン増殖を経て形質細胞に分化し，BCRと同じ抗原に結合する抗体を大量に産生する．

BCRと抗体は同じ免疫グロブリン（Ig）遺伝子から産生され，抗原と結合する可変領域と抗体のエフェクター機能を担う定常領域からなる．可変領域の多様性と定常領域のクラス変換は前駆B・B細胞内で起こるIg遺伝子のDNA組み換えによる．

抗体にはIgG，IgM，IgA，IgD，IgEというクラスがあり，病原体や毒素の中和や排除，感染細胞やがん細胞の殺傷などの機能を有する．また，自己免疫やアレルギーの原因にもなりうる諸刃の剣である．

免疫の基礎の基礎⑥　Ⅰ型アレルギーはどのようにして起こるのか本村　泰隆 76巻2号 , 2025年2月 , pp.197-200

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Key Points

アレルゲンは，T細胞を活性化する抗原となり，抗原特異的免疫応答を惹起する．

アレルゲンが生体内に侵入後，T細胞を介してアレルゲン特異的IgEが誘導され，感作が成立する．

アレルゲン特異的IgEは，マスト細胞や好塩基球の細胞表面上でアレルゲンにより架橋されることにより脱顆粒を起こし，アレルギー反応を引き起こす．

免疫の基礎の基礎⑦　免疫寛容のメカニズムと自己免疫疾患吉村　昭彦 76巻2号 , 2025年2月 , pp.201-209

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Key Points

JAK阻害薬の適応疾患の多くは「免疫寛容」が破綻した病気である．

免疫系は病原微生物やがん細胞など身体にとって有害な物質を排除する一方で，自己や食物など無害な異物には反応しないように厳密に制御されており，これを「免疫寛容」とよぶ．

免疫寛容のしくみの一端が腫瘍免疫において「チェックポイント阻害分子」とよばれる抑制性受容体群で，ノーベル賞を受賞したことで有名なPD-1やCTLA-4が含まれる．

抑制性分子群が強く発現した状態のT細胞は機能不全，すなわち抗原やサイトカインの刺激に応答できない状態にあり，このような状態のことを「アナジー」あるいは「疲弊」とよぶ．

これらの分子群は遺伝的に発現が低下することで免疫寛容が破綻し，自己免疫疾患やアレルギー疾患を発症する．

JAK阻害薬と免疫系にはたらくくすり①　ヤヌスキナーゼとJAK阻害薬吉村　昭彦 76巻2号 , 2025年2月 , pp.211-216

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Key Points

ヤヌスキナーゼ（JAK）はさまざまなサイトカインのシグナルを細胞内に伝える「シグナル変換酵素」である．

JAKにはJAK 1，JAK 2，JAK3，TYK2の4種類があり，サイトカインの受容体に会合している．サイトカイン受容体によって使われるJAKが異なる．

JAK1，JAK2，TYK2は広範な細胞に発現しているが，JAK3は血液系，免疫系の細胞にのみ発現し，共通γ鎖に会合する．

JAK阻害薬の多くはATP競合型であり，サイトカインの作用を遮断することができる．JAK選択性により抑制するサイトカインが若干異なる．

JAK阻害薬は自己免疫性疾患やアレルギー性疾患の治療に使われる．適応する疾患は現在拡がりつつある．

JAK阻害薬と免疫系にはたらくくすり②　これまでの免疫を抑えるくすりのしくみ和田　恭一 76巻2号 , 2025年2月 , pp.217-220

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Key Points

免疫系に作用する薬剤として免疫抑制薬と免疫調節薬がある．

免疫抑制薬としてはカルシニューリン阻害薬や代謝拮抗薬がある．

免疫調整薬としては5-ASA製剤や，転写因子nuclear factor κB（NFκB）の活性化を抑制するイグラチモドなどがある．

JAK阻害薬と免疫系にはたらくくすり③　抗体医薬と比べてみました山岡　邦宏 76巻2号 , 2025年2月 , pp.222-225

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Key Points

抗体医薬は高い特異性で標的分子機能を抑制し，強力な治療効果を発揮する．

JAK阻害薬は細胞内シグナル経路を阻害する薬剤であり，治療効果や患者利便性が高い．

抗体医薬の患者負担は軽減傾向，一方でJAK阻害薬は低コストだが患者負担が大きい．

JAK阻害薬の効きどころ，使いどころ①　関節リウマチ田中　良哉 76巻2号 , 2025年2月 , pp.226-231

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Key Points

関節リウマチ治療の基本方針は，発症早期に診断，治療介入し，関節炎を沈静化させて寛解導入することである．

禁忌がなければ第一選択薬の抗リウマチ薬であるメトトレキサートで治療を開始し，半年以内に寛解に到達しなければ，生物学的抗リウマチ薬，さらに，JAK阻害薬を追加併用する．

JAK阻害薬などの分子標的薬で治療する際には，治療前のスクリーニングと治療中の安全性のモニタリングを徹底し，有害事象発現時の速やかな内科的対応が必要である．

JAK阻害薬の効きどころ，使いどころ②　炎症性腸疾患清原　裕貴 , 金井　隆典 76巻2号 , 2025年2月 , pp.233-237

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Key Points

炎症性腸疾患に対するJAK阻害薬は，ステロイド不応例・依存例をはじめとした難治例に対するAdvanced therapyとして位置づけられる．

トファシチニブはpan JAK inhibitor，フィルゴチニブとウパダシチニブはJAK1 inhibitorであり，潰瘍性大腸炎では3剤すべてが，クローン病ではウパダシチニブが保険適応となっている（2024年12月現在）．

トファシチニブとウパダシチニブでは，寛解導入療法と寛解維持療法で用量が異なる．さらに，ウパダシチニブによる寛解導入療法の期間は，潰瘍性大腸炎とクローン病で異なっている．

JAK阻害薬の効きどころ，使いどころ③　アトピー性皮膚炎小亀　敏明 , 椛島　健治 76巻2号 , 2025年2月 , pp.238-242

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Key Points

JAK阻害薬の登場により，アトピー性皮膚炎の病態を司るサイトカインを論理的に標的とする治療が可能となった．

しかし，特定の患者群では，分子生物学的見地からは予期できなかった有害事象の発生も報告されている．

JAK阻害薬の効きどころ，使いどころ④　乾癬高橋　ちあき , 雁金　詩子 , 足立　剛也 76巻2号 , 2025年2月 , pp.243-248

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Key Points

乾癬治療の多様化と個別化：JAK/Tyk2阻害薬の導入により，乾癬治療の選択肢が増え，患者ごとのニーズに応じた個別化治療が可能になった．

乾癬治療ピラミッド計画におけるポジショニング：JAK/Tyk2阻害薬は，従来の治療法を補完しながら，生物学的製剤や免疫抑制剤に匹敵する治療効果をもつ新たな全身療法として注目されている．

今後の課題と展望：エビデンスの蓄積と適切な治療体系内でのポジショニングが必要であり，患者のQOLや病態に応じたSDMを基盤とする治療の推進が求められる．

JAK阻害薬の薬学管理で患者さんをずっと支える①　JAK阻害薬の初回指導とフォローアップ冨田　隆志 76巻2号 , 2025年2月 , pp.249-254

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Key Points

感染症，血球減少，腎・肝機能障害などの副作用リスクに注意し，初期症状と対処法を十分に説明する．

定期的な血液検査や感染症対策の継続的な指導が必要．特に帯状疱疹リスクが高いため，早期発見・治療の重要性を強調する．

創傷治癒遅延のリスクがあるため，手術や侵襲的処置の際の休薬について情報共有が重要である．

JAK阻害薬の薬学管理で患者さんをずっと支える②　JAK阻害薬の投与に必要な検査とワクチン萱野　勇一郎 76巻2号 , 2025年2月 , pp.255-260

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Key Points

JAK阻害薬投与前後の検査モニタリングが重要．

感染症リスクに応じたワクチン接種の検討．

継続的な薬学管理による長期的な患者支援の実践．

連載

えびさんぽ（第38回）　JAK阻害薬の有効性や安全性に関する最新知見は？青島　周一 76巻2号 , 2025年2月 , pp.158-160,262-263

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医薬品適正使用・育薬フラッシュニュース佐藤　宏樹 , 澤田　康文 76巻2号 , 2025年2月 , pp.264-265

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H₂RAよりもPPIの方が腸内細菌叢が乱れる

ポイント

健康ボランティアを対象としたランダム化比較試験で，ヒスタミンH₂受容体拮抗薬（H₂RA）と比較して，プロトンポンプ阻害薬（PPI）ではより顕著な腸内細菌叢の乱れが認められた．また，その変化をもたらした要因として口腔内細菌の腸内への移行が大きかった

薬剤師40年目の独り言　敷地内薬局の是非と元事務部長逮捕を混同してはいけない鎧のない薬剤師 76巻2号 , 2025年2月 , pp.266-267

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飲み合わせ研究所　子どもの服薬Tips（第26回）　アリメジン^®シロップ0.05% 小嶋　純 , 米子　真記 76巻2号 , 2025年2月 , pp.268-269

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薬剤師の1，2，3，4！（ヒフみよ）大井教授の皮膚×くすり講座（2時限目）　生理学皮膚の物理的なバリア機能大井　一弥 76巻2号 , 2025年2月 , pp.270-275

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がん研有明病院薬剤部の ABCセミナーの楽屋話前　勇太郎 , 庄司　大悟 76巻2号 , 2025年2月 , pp.277-281

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「全（ZEN）か無（MU）か」じゃないんだよ薬物相互作用（File 05）　ループ利尿薬関連薬物相互作用（カリウム編）平井　利典 , 児島　悠史 76巻2号 , 2025年2月 , pp.282-290

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ぐっとよくなる！漢方処方快訣ビフォーアフター（第14回）　「かぜの予防」＋「胃もたれ治療」＝「リウマチの薬」？？患者の「不定愁訴」にきめ細かく対応する漢方治療津田　篤太郎 76巻2号 , 2025年2月 , pp.291-294

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ガチではじめるマジでわかる経口抗がん薬（第12回）　ロンサーフ^®（トリフルリジン/チピラシル）の発熱小澤　有輝 76巻2号 , 2025年2月 , pp.157,295-304

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Gebaita?! 薬剤師の語ログ（第38回）　礼篠田　康孝 76巻2号 , 2025年2月 , pp.306-309

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薬剤師力の型新たな思考と行動プランを手に入れろ！（参拾捌ノ型）　パターン化された発熱性好中球減少症の対応からの脱却！病態変化を考慮し，抗菌薬投与を個別化せよ！菅原（鈴木）　義紀 76巻2号 , 2025年2月 , pp.310-317

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事例

「発熱が続いているので広域抗菌薬に変更してもよいですよね？」

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目次 76巻2号 , 2025年2月 , pp.154-156

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とびだせヤッキョクの仲間たち　キャラ紹介 76巻2号 , 2025年2月 , pp.290-290

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奥付／次号予告 76巻2号 , 2025年2月 , pp.320-320

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76巻2号
(2025年2月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0044-0035 南山堂

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