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1.はじめに
東近江市永源寺地域は,滋賀県南東部に位置し,三重県との県境に接する山間農村地域である.地域の人口は5,400人,高齢化率は35%を越え,集落によっては50〜80%と高齢化率の高い地区もある.ここ永源寺地域にある数少ない医療機関のひとつが,筆者の勤務する東近江市永源寺診療所である.常勤医師は筆者1人,入院する設備はない無床診療所.この地域には診療所以外は,調剤薬局は1軒しかなく,デイサービスやショートステイを提供する介護施設はあるものの,訪問看護ステーションやリハビリ施設はない.ましてや病院などの入院施設もない.そのような医療介護資源の乏しい地域である一方で,年老いても地域での生活を続けたいと希望する人も多い.このような地域で,ここ10年間での当院での在宅看取りは,25〜36人.永源寺地域全体では年間約60人ほどが亡くなるので,少なく見積もっても地域の4〜5割の人が在宅で亡くなる.
「超高齢社会」を迎え,「多死社会」へ進む現在,国は在宅看取りを進めるため地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいる.これは病院医療から地域ケアへと移行する政策であるが,病院医療を否定するものであろうか.それとも,高齢者を含めた地域住民が安心して生活できるための手段となるのであろうか.そして,その結果として住民の満足度を高めるものになりうるのであろうか.まだまだ未知の部分が多い.その一方で,われわれは医療・介護資源の少ないこの永源寺地域でも,地域包括ケアシステムを進めるため,10年以上前からさまざまな取り組みを行ってきた.高齢化率が全国平均よりも10年以上も進んでいるこの地域での取り組み,人々の生活の営み,そしてそれを支える多職種と地域のつながりを紹介して,今後の地域包括ケアシステムの可能性について考察する.
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