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はじめに
「相談」とはどんなところでも発生し得るアクションであり,相談支援を専門とする事業所だけで行われているものではない。障害のある人に限って言っても,通所系,入所系,訪問系,どのような類型の事業であっても利用者が支援者に「相談」することは日常的にあり,家族や友人関係,近所など地域社会においてもどこでも行われているものである。加えて近年,高齢の方は地域包括支援センター,障害のある方は基幹相談支援センター(あるいは委託相談支援センター),子どもは児童相談所,DV(ドメスティックバイオレンス)は保健所や警察,消費者被害の相談は消費生活センター,その他社会福祉協議会は貸付の相談や心配事相談,民生児童委員がいて,もちろん市の各担当課はそれぞれの分野の相談を受けている。近所のおじちゃん,おばちゃんも含めれば「相談」機能はあふれかえるほどあるのではないかと思うこともある。
しかし,それでも,いやそんな状態だからこそ「どこに相談に行けば良いかわからない」「ここは担当が違うとたらい回しにされて疲れ果てた」「どこに相談しても解決しない」という声が絶えることはなく,利用する側からみれば決して万全で包括的な相談支援体制が構築されているとは言いがたいのが現状である。
社会福祉関連制度は変遷を続け,10年前に比べれば確実に機能はバージョンアップし,それに伴って社会資源は充実してきている。しかし一方で,生活で抱える諸問題は複雑化し,複合的な生活ニーズとして顕在化してきている。複合化する生活ニーズと多様化する制度や社会資源を適切にマッチングさせ,生活のしづらさの要因となる問題を解決していくためには,包括的な相談支援体制をつくっていくことが当然必要となるわけである。
精神障害のある人にとっても同じことは言えるのであるが,さらに精神障害特有の問題により,例えばそもそも自身の問題に気がつきにくいことや意欲の著しい低下など,相談のアクションに辿り着かないまま問題を多く抱え,生活破綻につながってしまうことも少なくはない現状がある。だからこそ,関係している周囲の人がその問題に気がつき,適切な相談機能にアクセスすることが精神障害のある人への生活支援ではポイントとなるのである。
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