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はじめに
20世紀に花開いた西洋医学は急性疾患や感染症などの原因究明とともに,その治療を可能にしてきた.しかしその反面,生活習慣病などの慢性疾患,原因不明の疾患,精神的な要素の関与する疾患,再発性の疾患などについては治療に苦慮する例も少なくない.加えて個々の体質や体調を考慮した治療はほとんどなされていない.
西洋医学はもともと分析科学的な手法を用いており,病気の病態解明とそれに伴う治療法の開発という過程を経ることにより成功してきた.したがって,病人よりも病気のほうに焦点があたりがちという点が指摘されている.最近,Quality of Life(QOL)の重要性が叫ばれ,病気だけでなく病人全体を治療するという姿勢が重要視されるようになったのも,今までの西洋医学に対する反省からとも言えるだろう.こうした背景から,欧米では西洋医学の欠点を補い,患者を全人的に治療できる相補・代替医療complementary & alternative medicine(CAM)が盛んに行われるようになってきている.
もう一方で,西洋医学での医療費が高騰し,国家経済を脅かそうとしている現状も見逃すことができない.わが国でも高齢社会の到来をむかえ,医療費の高騰が問題となっている.そのため各国政府は医療費の削減の問題に真剣に取り組んでいる.特に米国では危機感が強く,その解決策の1つにCAMを取り入れ,公的医療費の削減に成功した.
教育面からみても,米国の医学校125校のうち75校(60%)でCAMに対する講義も始まっている.代表的な大学としてハーバード,スタンフォード,コロンビア,カリフォルニア,アリゾナなどがあげられる.イギリスやフランス,ドイツなどでもCAMについての教育がなされており,特にドイツでは,1993年より自然療法が全国の医学部で必須となり,国家試験にまで取り入れられている.またオーストラリアでは,自然療法が学位の対象とされ奨学金すら出されている大学もある.
最近では,CAMに西洋医学的アプローチを包含した統合医療が論じられるようになってきた.世界的に統合医療integrative medicine(IM)に関心が高まってきていることは明らかで,今まさに医療の変換期であるといえよう.
本稿では,CAMおよびIMについて概説し,高齢者への応用などについて述べてみたい.
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