連載 援助場面からまなぶ家族看護学・5
家族の意思決定を促す援助
渡辺 裕子
1
,
鈴木 和子
1
1千葉大学看護学部家族看護学講座
pp.1066-1069
発行日 1995年11月1日
Published Date 1995/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904937
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
今月号では,家族の意思決定を促す援助について考えていきたいと思います.家族が家族員の健康問題に対処する過程では,家族がその問題にどのように対処するのか,重大な選択をしなければならない場合が多くあります.なかでも,在宅療養を続けるのか,入院あるいは入所させるのか,環境の良い土地への転地療法を選択するのかといった重大な決定は,家族の迷いも大きく,決断のつかぬうちにタイミングを逃してしまうことも多いものです.しかし,自分たちの意思で選択したのだと思えてはじめて,家族は本当の意味で問題に主体的に対処することができるのです.では,家族の意思決定を促すためには,看護者はどのように家族にかかわり,どう援助したらよいのでしょうか.迷いや不安を乗り越え,終末期の患者を自宅へ連れて帰ることを選択した佐々木さん(仮名)一家への援助をもとに考えてみましょう.
佐々木さんは56歳の女性で,半年前に胃がんの手術を受けましたが,すでに腹腔内に転移しており,4か月の自宅療養ののち2週間前に再入院してきた方です.ほとんど痛みの訴えはなく,塩モヒによる痛みのコントロールは良好でしたが,血性の吐物を頻回に嘔吐し,全身の倦怠感が顕著で,寝返りを打つのがやっとの状況でした.家族は,60歳の夫と26歳の長男の3人暮らしで,24歳の長女は,隣市へすでに嫁いでいます.夫と長男は造園業を営み,仕事の合間にほとんど毎日,どちらかは面会に来ていました.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.