日本老年看護学会第9回学術集会特集 シンポジウムⅠ
地域におけるEBHに基づく高齢者の生活機能増進システムとその考え方
久野 譜也
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1筑波大学大学院人間総合科学研究科
pp.16-21
発行日 2005年3月15日
Published Date 2005/3/15
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はじめに
わが国は,今後もさらなるスピードで超高齢社会に向かっている.特にこれからの10年間は,高齢化の「最後の急な上り坂」と形容されるぐらい高齢化が加速する.実際,統計的予測としては,2005年からの10年間で高齢者の割合は30%増というスピードで増加することが示されている.これは,最も多くの人口を有する年齢層である「戦後のベビーブーム世代」が,2015年に高齢期を迎えるためである.一方,その後の伸び率は10%程度にとどまることも示されているが,その時の高齢者人口は3,500万人にもなることが見積もられている.
現在の高齢者層を介護や支援が必要な人とそうではない人の2つに分類すると,その割合は約2:8である.この割合が10年後にも変わらず同様であるとすると,介護や支援が必要な人65歳以上の高齢者に限ってみても700万人という数になる.現在(2004年5月現在)の要介護認定者が約390万人であることからみても,約2倍に増加することになる.このことは,本人や家族の問題にとどまらず,社会全体の問題であることは間違いがなく,これに対する社会としての介護予防政策が求められている.
これらの介護予防政策の中に,重要な要因の一つとして運動による予防効果を位置づけることが求められる.そこで本稿では,介護予防と運動という視点での現状分析,介護予防を可能とする地域システムのあり方,そしてそれを実現可能とする運動による介護予防政策について論じる.
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