特集 健康増進
健康増進の考え方・2
小野 三嗣
1
1東京学芸大学運動学
pp.315-321
発行日 1977年5月15日
Published Date 1977/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205379
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
「健康とは病気でないというだけでは不充分で……」とよくいわれるが,表現に誤解が生じやすい.些細な疾病・異常を持っているか否かは,健康を論じる場合には必ずしも問題にする必要はない.身体活動がそれによって制約されるような疾病がある場合には健康体といえないであろうが,むしろ本質的に考えて,健康を疾病の有無と結びつけて論じることに抵抗を感じるのである.
特に現実の社会人が目ざしている健康増進に,何らかの指針をあたえようとする意図の下にこれを論じる場合には,ますます不都合である.たとえば,健康増進の一手段として忘れることのできない運動を実施する場合,疾病・異常のあるものをその対象外とし,どこにも全くそれが認められないものだけがそれを行うものだとした場合,運動とは一握りの特殊な人間集団のためのものだ,という感じになってしまうことを否定できない.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.