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I.はじめに
毎年、災害に見舞われる本邦では様々な方面から災害対策が実施されている。論考のテーマである災害による死には、直接死と二次災害死・関連死がある。災害の二次災害には、地震発生後の建物の倒壊や火災等に加え、風水害が発生した後、冠水による感電死や汚水による感染症等がある。災害関連死には、被災後の医療供給の不足、劣悪な環境下、避難所等の慣れない生活のストレスによる慢性疾患の悪化、密集・密接した状況で感染症が蔓延した末の死があげられる。このように災害による直接被害ではなく、避難途中や避難後に死亡した者の死因について、災害との因果関係が認められるものがあり、災害関連死とみなされている。
災害による死者は、東日本大震災では直接死15,899名と3,723名の関連死を併せると19,622名、熊本地震による死亡者は272名、西日本豪雨では130名以上、北海道胆振東部地震では43名が報告されている(2020年3月31日現在)。これら災害による予期せぬ死に至った方には家族がいる。災害による死者の3親等以内の血縁者(親・兄弟・子等)および配偶者等の遺族は、仮に死者1人に対し最も近い血縁者を平均5名と計上した場合、過去10年間で約10万人以上の遺族がおり、災害による死の影響を被っていると推測される。
また、2020年はCOVID-19蔓延により、様々な生活様式の変化が求められた。避難所の在り方も、飛沫感染を防ぐための衝立の設置、マスクの着用、手指消毒の徹底等、密集・密接を避け、一つの避難所に大勢が集まる従来の形態を改め、より安全な避難の選択肢が提示されるようになった。
本稿では、災害による死と遺族へのケアについて、感染症に関連する死に焦点を当て論じたい。本論考の目的は、災害関連死でも特に感染症が引き金となり遺族となった方々への偏見防止と、看護の専門性を活かした遺族への配慮とケアについて情報共有することである。なお、倫理的な配慮として資料の出典を明らかにし、著作権に十分注意を払い引用した。
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