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Ⅰ.はじめに
わが国ではがんが死因順位の1位であることは変わらず,現在も全死亡者の約30%を占めている現状があり,がん治療は日々研究・実践されている.特に近年,化学療法の場が入院から外来に移行してきていることは,患者と医療者にとって大きな変革である1).この移行には主に次の3つの背景がある.1つめは患者および家族のQOLのため入院期間を短縮化し治療を外来で行うことを重視することであり,2つめには,保険請求制度が2003年度より変更になり医療費の効率化を積極的に進めていることがある.3つめとして,化学療法に伴う嘔気・嘔吐に対する制吐剤などが進歩し,強い副作用を伴いやすい化学療法も外来で可能になってきたことが挙げられる.これらの背景により,化学療法の外来への移行は今後さらに拡大・浸透していくことが予測される.一方,患者は入院しないことによりさまざまな不安を抱きやすい1)ため,精神的サポートを得ながら治療が安全・安楽に継続できることを求める.そのようなニーズに応えるため,医師・看護師・コメディカルの協力とシステムづくりが必須となっている.
がん化学療法の看護研究は,米国では1978年にObersによってがん看護研究の焦点の優先順位が調査され,嘔気・嘔吐を緩和する看護方法が1位として注目された2).その後,1981〜1994年の調査結果においても,症状コントロールを焦点とした研究の順位は2位に挙げられ,優先度が高い研究課題として研究が進められてきた2).わが国でも,1991年に発表された「がん看護に関する研究の優先性について」3)では,化学療法の副作用とケアの研究が必要であると回答した割合は98.6%を占め,取り組む必要性が強く認識されてきた.さらに,1977〜1997年の掲載論文を調査した荒川らの「がん化学療法の副作用に関する看護研究の動向」4)では,「QOL」,「適応・コーピング」,「味覚・嗅覚」などを焦点とした論文が1990年から増加したことを明らかにした.また,改善点として文献検討を十分行い知識の蓄積を行うことや,ケアの効果を測定する実験研究の推進が論じられていた.
化学療法を受ける患者の医療環境の変化に応じて看護を検討していくためには,がん化学療法に関連する看護研究のこれまでの文献を活用していくことと,将来を見据え今後の課題や展望を見いだす視点で研究を外観することが重要である.
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