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Ⅰ.はじめに
我が国の高齢者人口は歴史的にも過去に見られないほど急速に増加している.人口統計によると,65歳以上人口が500万人を越えたのは今から40年前であったが,それから20年後の1980年には1000万人を越え,現在は2000万人に至っている.高齢者人口の増加は健康度の向上によりもたらされたもので,医療保健活動の進歩と普及の成果と考えられる(柄沢昭秀,1998).しかし,高齢者は,人間にとって避けられない必然的な現象であるAging(以下,エイジングと表記する)という成長発達のプロセスの一時点に存在している.
エイジングを研究の焦点とする老年学研究において基本的な焦点は老化現象に関連して起こる機能低下や喪失に置かれている(Riley. et al.,1994).エイジングに関する予想は個人の上にも社会の上にも喪失の不安や増えるコストや荷重という特徴が付けられ易いことは驚くことではない.このようなエイジングの否定的な側面以外にも,エイジングを成長,バイタリティー,精励,満足感を含んだ現象として捉える肯定的な側面を取り上げる研究もある.数人の生物学者や医学者は,successful(以下サクセスフルと表記する)で肯定的なエイジングは多面的な性質や多大な変化性を持つものとして,公正な理解のために高齢者の概念として重要であると述べている(Fries,1989;Rowe&Kahn,1987).また,殆どの高齢者が,若い時よりも現在の方が満足だと感じている(Herzog&Rodgers,1981).今まで高齢者は一般に否定的なステレオ・タイプなイメージを持たれていたが,一方,人生の主なターニング・ポイントを通過しながらライフ・コースの残されたステージを進みつつ,未来は開かれていると言う期待を持って進んでいる者もある.高齢者は老化現象による身体的自己や精神的能力,自己の思考に対する他者の対応方法の変化をも感じている.エイジングを理解するためには,個人の細胞レベルから人々に影響を与える社会全体の問題までどのようなプロセスを経ているか,個人的体験を越えた見解まで拡大することが求められている(Morgan,1998).欧米諸国の老年学を始めとする種々の分野での研究では,エイジングを肯定的側面であるサクセスフル・エイジングにも積極的に取り組もうとする傾向が見られる.しかしサクセスフル・エイジングに関する看護・保健医療・福祉領域での研究の取り組みは十分とは言えない.
従って,本稿ではWalker&Avant(1995)による概念分析法の手順に基づき,看護実践や研究における「サクセスフル・エイジング」の概念の応用性を高めることを目的として,「サクセスフル・エイジング」の概念分析を行う.
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