日本看護診断学会・第24回学術大会報告 【特別講演】
1. 診断プロセスは治療の営みである—精神科医の立場から
中村 敬
1
Kei Nakamura
1
1東京慈恵会医科大学附属第三病院精神神経科
1The Jikei University Daisan Hospital, Department of Psychiatry
キーワード:
精神医学
,
psychiatry
,
診断
,
diagnosis
,
操作的診断
,
operational diagnosis
,
見立て
,
case formulation
,
治療
,
treatment
Keyword:
精神医学
,
psychiatry
,
診断
,
diagnosis
,
操作的診断
,
operational diagnosis
,
見立て
,
case formulation
,
治療
,
treatment
pp.46-51
発行日 2019年3月15日
Published Date 2019/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7004200043
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1970年代まで精神医学における診断は,個々の医師や帰属する治療文化によって隔たりが大きかった.その反省から操作的診断方法を採用した『精神疾患の診断・統計マニュアル第3版(DSM-Ⅲ)』(1980)は,米国から世界へと波及して研究の進歩を促した反面,患者の独自性を等閑視する風潮をもたらした.それは外から対象を操作するという治療観に帰結するものでもあった.そこで本稿では,治療を患者(=主体)の回復を促す共同作業としてとらえ直す必要があることを論じた.操作的診断を補い,治療を導く診断=〈見立て〉をつけるためには,患者の生活史,病前性格,発症状況に注意を向け,状況に対する志向的営みを見出すことがポイントであった.
こうした〈見立て〉のプロセスは,それ自体が治療の第一歩である.治療者が患者を,独自の人生を歩んできた主体と見なす姿勢があって,はじめて患者との良好な関係を築くことができるからである.それは医師の診療に限らず,看護行為にも通底することではないだろうか.
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