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Ⅰ.はじめに
2012-2014版『NANDA-I看護診断:定義と分類』では,“Diagnosis Label”の訳が「診断ラベル」から「診断名」に変わり,わかりやすくなった.注目すべきは看護診断数の増加であり,リスク型看護診断やヘルスプロモーション型看護診断が急増していることである.類似の看護診断を鑑別するために,看護師には高いアセスメント能力が求められ,臨床に混乱が生じかねない.実際,これほど詳細な看護診断を必要としているか,また,こうした看護診断の解決に導く看護介入に違いはあるのかなど,疑問が残る.むしろ,ケアを効果的に提供する観点から,いくつかの看護診断をまとめ,シンドローム(症候群)型の看護診断を検討する時期がきているようである.
今回の教育講演では,がん性疼痛や終末期の看護診断に関する筆者の看護研究に基づくエビデンスを示して,シンドローム型看護診断としての「慢性疼痛症候群」の可能性を検討し,そのうえで,慢性症候群に対する看護介入を考察したい.
そのために,まず,末期がん患者の痛みの特徴に注目しよう.次に,末期がん患者の苦悩について分析する.
通常,看護師は「慢性疼痛」と診断し,疼痛緩和を目的に看護介入をしているが,末期がん患者の自覚症状はがん性疼痛だけではない.全身倦怠感,食欲不振,便秘,不眠,呼吸困難,嘔気・嘔吐などの症状が挙げられている.また,末期がん患者の苦悩はこれらの身体的な苦痛だけでない.予後が告知され,死を受容していく過程において体験する末期がん患者のさまざまな苦悩は,多面的で重層的な構造を呈していることを,筆者らの研究に基づき述べる.
そのうえで,『NANDA-I看護診断―定義と分類2012-2014』における“syndrome”(症候群)の定義をもとに,「慢性疼痛症候群」を提案する.最後に,「慢性疼痛症候群」に対する看護介入について概略する.
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