がん免疫振興財団シンポジウム 「末期患者に対する積極的治療」から(その4)
癌末期の疼痛除去について
村山 良介
1
Ryosuke Murayama
1
1東邦大学医学部・麻酔科
pp.1170-1173
発行日 1982年6月10日
Published Date 1982/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217823
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疼痛というもの1,2)
癌の末期に疼痛が一番問題となってくる.では疼痛とは何かと,あらたまって聞かれると答に窮する.ペインクリニックなるものを始めた頃,疼痛というものを簡単に考えていた.痛みというものは誰でもわかるものであり,そんな特殊なものではない.針でついたり,刃物で切った時に感じるものである,お腹が痛い,頭が痛いというのも日常経験することであると.しかし,20年たって,神経ブロックも麻薬も効かない痛みがあることがわかり,この人の痛みとは一体なんなのかと考え出すに及んで,今まで疼痛というものを本当に理解していたかを疑うようになると,いろいろな問題点が浮かんできた.臨床的に疼痛とは,「真実を語っている場合,言語またはこれに代わる方法をもって"痛い"と告げたとき,その人のもっている意識内容である.」と定義した.なぜこのようにややこしい定義をしなければならないかというと,同じ刺激たとえば針でついても痛く感じる人とそうでない人がある.これは個人的な感受性の問題といえる.また,浅い全身麻酔で手術を始めた時,血圧が上昇すると疼痛のためと説明され,一様に納得するが,全身麻酔をかけられているので疼痛は感じていない.これも痛みといわれている.疼痛を起こす刺激も疼痛といわれているのである.そこで痛みに一つの線を引いておく必要があったのである,そうしないと疼痛を語りながらすれ違いを生じてしまう.
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