扉
医惟在活物窮理
駒井 則彦
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1和歌山県立医科大学脳神経外科
pp.109-110
発行日 1993年2月10日
Published Date 1993/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436900595
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華岡青洲(1760-183)は蔓陀羅華(主成分はヒヨスチアミン,アトロピン,スコポラミンなど)を主薬とした「通仙散」により全身麻酔下に乳癌の摘出に成功したことで有名である.最近では青洲の妻加恵と母於継の葛藤が中心に描かれている有吉佐和子の小説「華岡青洲の妻」で話題になった.しかし,青洲は外科医としてのみならず教育者としても卓越した医学者であった.
若き日の京都遊学中,中国の名外科医「華佗」を憧憬崇拝し目標としていた.華佗は中国の三国時代(220-280)の名外科医で,「魏志」によれば蔓陀羅華を主薬とした麻酔剤「麻沸散」を用いて多くの切開手術を行っていたようである.蜀の国の名将であった関羽も彼の手術をうけたという.華佗は魏の曹操の診察を頼まれ,脳膿瘍(?)で開頭術が必要であると診断し,逆に疑惑をうけ投獄され結局獄死したのである.残念ながら華佗の医術や処方に関する貴重な記録は後難を恐れて焼却され,わずかに魏志に記載されているのみである.1700年前既に脳膿瘍の診断が出来たとすれば非凡な脳外科医である.現在でも画像診断の助け無しに脳膿瘍を診断出来る医師がどれほどいるであろうか.
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