海外事情
アメリカ滯在1年間(III)
山村 好弘
1
1国立療養所刀根山病院
pp.379-382
発行日 1960年5月1日
Published Date 1960/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201662
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滞在2日,さらに北上してモンタナ州に進入しました。この州はカナダの国境にあり,遠く山脈がのぞまれ,砂漠は牧草地帯となり,小川が流れ水清く,野は緑に日本を思わせる美しい州です。人間も素朴で人なつこく親切。人々もカウボーイのような帽子をかぶり,ただピストルを吊つていないのが,映画と異つているだけです。この州の大きさは,日本と略同じ,さきのワイオミングから,このモンタナ州はアメリカンインディアンの最も多い州で,いたるところで彼等を見かけます。この州の東南方に,かの有名なカスター将軍の第7騎兵隊の全滅した戦場の遺跡があります。このインディアン,今では静かに,白人といつしよに町で働いたり寄留地に住んでいますが,ニグロと違つてアメリカ政府は彼等を非常に厚遇しているようです。何といつても先住民族,100年前に詭計にかけて侵略し,大虐殺をやつたのを恥じてか,1人50〜60ドルの補助金をあたえ,公営事業には出来るだけ優先的に採用するという調子,しかしニグロの活気のある,いかにも生活力の旺盛なのにくらべて,どことなく元気がなくて活気のないような顔をしています。聞くところによりますと,100年又は200年前に先祖がアメリカにやつて来たというアメリカ人の殆んどはインディアンの血が混つているということです。
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