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欧米に在つて感じたこと
奥田 稔
1
1千葉大学医学部
pp.773-774
発行日 1964年8月20日
Published Date 1964/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492203312
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カナダのPostodoctorate Research Fellowとして1961年秋日本をたち,カナダ(McMaster Univ.)に1年,ウィーン(Universitätsklinik in Wien)に4ヵ月,ストックホルム(Karolinska sjukhuset)に1ヵ月滞在し,その間アメリカ,イギリス,フランス,イタリア,ドイツ,スイスの各都市を歴訪した。観光のついでに立寄つた大学は別としてもこのような短い外国生活の経験から,限られた紙面に,世界の学界の動向を論ずるのは不可能に近い。外国文献のダイジエストでも作り,知つたかぶりを振舞う方が気がきいているかも知れないが,殊更に自らの狭い限られた経験にこだわつた感想を述べる方がせめての責を果すことができると感じられる。
日本に帰つてすぐ関東地方会に出席し,今更ながらその盛会なのに驚いた。日本ほどだれもかれもが高邁な研究を目の色かえてやつているところはないだろう。カナダには耳鼻咽喉科学会の機関誌さえない。実験器械はごろごろしていても操る人が少ない。研究論文がなくても専門医になれ十分な金を得ることができるからであろう。何がなくても研究者のいることは日本の強味である。しかし彼地の研究者は自ら好んでやつているためか研究に誠実であり,オリジナルな仕事でなければ相手にされない。
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