日本看護診断学会第11回学術大会報告 定着させようNANDA看護診断
【シンポジウム・1】
今一度「どうして看護診断が必要か?」を考える―看護の言葉としての看護診断と看護記録
村田 節子
1
1宮崎大学医学部看護学科
1Department of Nursing, Faculty of Medicine, University of Miyazaki
pp.94-96
発行日 2006年3月15日
Published Date 2006/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7004100218
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看護の言葉としての看護診断
・看護診断誕生のきっかけ
看護は,「実在するあるいは潜在する健康問題に対する人間の反応」を扱うことが大きな特徴であるとともに,ジレンマのもとでもある.人間の「反応」や看護師の「看護行為」は,日常のさまざまな人間の行動と重なっており,明確な境界が見えないからである.たとえば,洗髪は美容院や床屋でしかるべき料金でサービスを受けることもあれば,セルフケアがうまくいかない対象者のために看護師が援助することもある.また不安は,病気に悩むときだけでなくプロポーズの返事を待っているときにも感じる感情である.そのとき,われわれは友人や家族から助けられることもあれば,看護師や臨床心理士のような専門職がかかわることもある.
看護診断が誕生したのも1970年代アメリカのセントルイス大学で診療録のコンピュータ化にあたり,看護の独自性を表現できなかったということに端を発している.看護師は常々「医師とは異なる問題を見て看護独自の仕事をしている」と主張していながら,自らの行為や内容を表す明確な言葉をもっていなかったのである.そのような状況を打開するために看護の関心事を「看護診断」として命名し「看護の守備範囲」を明確にしようとしたのである1).増加する医療損害補償の法律問題が看護記録への関心を高めたことも一因と考えられる.
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