【実践報告】
透析導入期における後期高齢患者の生きる希望を考察した一事例
平野 道枝
1
1国際医療福祉大学大学院修士課程
pp.62-67
発行日 2016年4月15日
Published Date 2016/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003200079
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Ⅰ.はじめに
慢性透析患者の高齢化が進み,日本透析医学会の調査によると,2013年末での導入患者の平均年齢は68.7歳となり,80歳以上の導入患者は導入全体の22.6%を占めている1).慢性腎臓病を患う高齢者は,生理的な老化に加えて,心血管系,バスキュラーアクセスなどの医療管理,精神・心理状態の変化,通院・介護などさまざまな問題をかかえている.
また,高齢者は加齢に伴い,身体的にも精神的にもさまざまな老化現象が出現し,同世代の死を経験することで自分の死を意識する機会も多くなる.そのため,高齢者がいつか訪れる死に対して考え,その人らしく生きるためには,終末期を見据えた看護が必要であり,その人らしい日々の実現を支援することが求められる2).
今回,家族の意思で透析導入に至り,その後の療養生活においても自分の意思を実現できずに家族や医療者に依存することになってしまった高齢透析患者の事例を経験した.本事例への支援を通して,死を意識しやすい高齢者が自分らしく生きていくには,高齢者自身の意思を尊重し,自分で決めることを支える自律に着目した支援が必要であることを学んだのでここに報告する.
なお,事例の公表にあたっては本人と家族に同意を得て,個人が特定されないように配慮した.倫理的配慮に関しては施設長の承認を得た.
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