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Ⅰ.はじめに
Peritoneal Dialysis(以下,PD)・Hemodialysis(以下,HD)併用療法は,腹膜透析と血液透析を組み合わせた腎代替療法で,渡辺と木村らによって1990年代に初めて紹介され1,2),1997年にテルモ株式会社共催によるPD+HD併用療法懇話会が設立,この療法はわが国で独自の発展を遂げてきた3).
併用療法は2010年12月末現在,約1,900名,実に腹膜透析実施患者の約20%に行われており,1週間のうちPDを5~6日実施し,1日数時間HDまたは血液濾過透析(Hemodiafiltration;以下,HDF)を実施する方法が1,290名と最も多い4).
一方,併用療法を行った場合の治療上の支出に対する診療報酬が十分とはいいがたく,普及を阻んでいることが報告されていた5).2010年4月の診療報酬改訂において,「在宅自己腹膜灌流指導管理料」算定患者に「人工腎臓」または「腹膜灌流」の週1回の算定がようやく認められるようになり6),併用療法が腎代替療法の1つとして,治療上有効かつ必要性があることが認知されたと同時に,経済的にも実施しやすい環境が整ってきつつあるといえる.よって今後,併用療法はさらに普及していくものと考えられる.
在宅で治療を行うPDは,一般的に月に1~2回程度通院し,地域の基幹病院で治療管理がなされている7).ところが併用療法を行う場合,基幹病院は患者が通院しやすいHD連携先医療機関を検討し,患者が治療を継続しやすい条件,環境を整える必要がある.研究者は,これまで多くの医療従事者から,連携方法や連携の難しさの相談を受けてきた.また併用療法について,いつ開始するのか,いつやめなければならないのかといった疑問が当社の患者向け情報誌の編集部に投稿されることもあり,その回答の必要性も感じていた.
院内のチーム医療で完結してきたPDにおける医療やケアを地域に広げていく場合,なんらかの方策やシステムが必要となる.併用療法における連携パスについての研究や報告はなく,開発の意義があると考えた.
また,パスは患者自身が自分自身の治療状況を把握し,医療従事者との共有目標を認識することで,病状をコントロールすることに役立ち8),アドヒアランスを高める9)ことも他分野では報告されており,併用療法においても有効ではないかと考えた.
佐々木らが開発した維持透析の疾患管理パス10)は,病状悪化の予防的介入を行うためのパスとして一定の評価を得ている.併用療法においても,長期にわたる予防的介入を行いながら,合併症予防に努め,適切な時期に治療移行をすることが必要である.そのため,この疾患管理パスを基盤にしたPD・HD併用療法における連携パス開発に着手し,プロトタイプパス作成までを第一報としてここに報告する.
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