第9回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告 ●教育講演
家族看護―糖尿病をもって生きる人々とその家族への支援
森山 美知子
1
Michiko Moriyama
1
1広島大学大学院保健学研究科保健学専攻 看護開発科学講座
1Division of Nursing Science, Graduate School of Health Sciences, Hirosima University
pp.54-61
発行日 2005年3月15日
Published Date 2005/3/15
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糖尿病は生活習慣と深くかかわる慢性疾患の1つである.慢性疾患であるということは,当たり前のようであるが,生涯にわたって食事療法や運動療法,薬物治療を続けることである.生活のなかには行事があり,日々さまざまなことが起こる.遅刻しそうになり朝食を抜かすといった出来事や,ストレス発散として「食べたい」という衝動がしばしば起こる.職場や友人との交流の場として,食事は常に利用される.家族団らんの時でもある.食事は,われわれの感情の安定と人間関係の維持に深くかかわる.
この重要な行動を常に「制限/コントロールしなければならない」と感じ,周囲も常に気を配っていなければならないとしたらどうだろう.人は「制限されている」と思えば余計に,それに対する執着が強くなる性質ももっている.衝動が抑えられず食事を摂ってしまったとき,それは「自己嫌悪感」に変わり,「罪悪感」に悩まされることになる.家族に注意されるたびに責められているように感じ,「怒り」や「嫌悪感」,そして「自己効力感の低下」から「無力感」が起こる.そして,ひいては病気の存在さえも否定する「否認」という意識状態・行動に出る場合もある.
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