◆特集 作業療法士の養成教育—現状と問題点
作業療法教育研究会の立場から
岩崎 テル子
1,2
1新潟医療福祉大学作業療法学科
2日本作業療法教育研究会
pp.16-20
発行日 2005年2月15日
Published Date 2005/2/15
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はじめに
作業療法教育における危機感は,大きく分けると4つある.第1は入口(適性のある入学者の確保)と出口(希望する就職先の確保)の問題,第2は養成校急増に伴う教育レベル維持の問題,第3は実習地確保の問題,第4は学生の質的変化への対応の問題である.最後は教育界全体に関わる問題で,いわば社会問題化しているこの課題を教育現場がどの程度認識し,対応策をとっているかである.ここでは問題点だけ以下に要約しておきたい.
専門職教育は義務教育から続く教育体系の一環としてある.今,義務教育制度は大きな転換期にある.知育偏重の見直しで“生きる力”を養うための総合学習時間の設置など,さまざまな試みが行われているが,現在の入学者はまだ偏差値教育の名残世代で,友達と遊ぶ機会も少なく協調よりは競争の中で育ってきた.大学入学を果たしても就職しない・家を出ない・結婚しないなど社会的自立を果たせない青年層が急増し,社会構造面からの分析も行われている1).
更に深刻なのは,経済成長によって達成された物質的豊かさが,こども達から生活体験,生産体験の機会を奪ったことである.また成人期,高齢期にある者にとっては,IT環境の急速な進展によって,培った経験が生かせない危機的状況にある.つまり“作業”と“環境”に質的変化が起き,世代間で共有・共感できる体験に乖離が生じつつある.人的支援を業とする専門職にとっては誠に厳しい現実であると言える.
このような社会情勢を踏まえながら,先に挙げた3つの問題点について述べたい.
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