◆特集 アフォーダンスと臨床
行為と姿勢制御—頸髄損傷者の行為を通して
玉垣 努
1
1神奈川リハビリテーション病院
pp.533-537
発行日 2000年12月25日
Published Date 2000/12/25
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はじめに
21世紀は脳科学の時代と言われており,人ゲノムを代表とするDNAの解明や神経再生も含めて大脳生理学が注目を浴びている.行為の研究にしてもまた然り,伝統的なゲシュタルト知覚の「中枢一推論説」などの知覚理論は脳を中心に取り組まれてきた.しかし,Gibson1,2)はこの感覚器官から知覚を説明する知覚理論のパラドクスを指摘し,「基礎的定位のシステム」「視るシステム」「聴くシステム」「味わい・嗅ぐシステム」「接触のシステム」を持つ「知覚システム」として表現し,動物の行為が身体内部のみで決定されるものでなく,環境が運動制御に大きく関与していることを提示した.環境が動物に提供する行為の可能性を「アフォーダンス」という言葉を用いて表現し,加えて,動物が取り囲む環境に適応し行為を行うためには,意識,無意識かは問わず,自発的に探索していく行為の重要性を示唆している.筆者は長い間,作業療法という活動を媒介としたアプローチに漠然と不安感を持って臨床を過ごしてきた.しかし,アフォーダンス理論と出会い,作業療法の目指しているところが正当であり,効率的なアプローチであることを確信してきている.今回,頸髄損傷者(以下頸損者)を通して,リアルな行為の中から新しい解釈とアプローチについて考察していく.
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