投稿論文 原著論文
自傷行為の悪化に伴う行為者の内的過程 青年期にある行為者の語りの質的分析から
新井 素子
1
1東京大学 大学院教育学研究科
キーワード:
心理的ストレス
,
ライフスタイル
,
自傷行為
,
大学院生
,
大学生
,
語り
,
半構成的面接
,
マインドフルネス
,
グラウンデッド・セオリー・アプローチ
,
悲観性
,
アンガーマネジメント療法
,
臨床的増悪
Keyword:
Self-Injurious Behavior
,
Clinical Deterioration
,
Life Style
,
Pessimism
,
Anger Management Therapy
,
Stress, Psychological
,
Grounded Theory
,
Mindfulness
,
Narration
pp.499-507
発行日 2022年7月10日
Published Date 2022/7/10
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自傷行為は、繰り返すうちに回数の増加などの「悪化」が生じることがある。本研究では、自傷行為の体験者である青年期の者の語りから、行為の悪化やそれに関わる要因を検討することとした。体験者である大学生・大学院生22名の協力を得て、その体験を半構造化インタビューにより調査した。得られたデータはグラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に分析し、「悪化」の過程を自傷行為の回数の増加、方法の深刻化、損傷の重症化の3点に注目して抽出した。その結果、情動制御を目的とする場合には、行為者の想定を超えた重度の身体損傷が生じることが明らかになった。また、自傷行為の悪化の背景には、行為者が行為の意味付けを「止めるべきもの」から、私事であり「悪化しても良いもの」と正当化する過程があると思われた。自傷行為者への援助の際には、行為の客観的な悪化だけでなく行為者の内面の変化にも注目して方針を立てることの意義が示唆された。
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