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はじめに
平衡機能障害は内耳,脊髄,小脳,大脳の損傷等に伴って発症するが,私達も報告したごとく平衡機能はADL能力と密接に関係すると考えられ,リハビリテーションの重要な問題の一つであるが,作業療法においては坐位姿勢あるいは坐位保持の問題であるとも考えられる。
椅坐位(椅子椅位)の問題は,作業能率と椅子と机の関係,乗り物の坐席シートの問題等一般社会における日常と極めて密接な課題として研究が進められている一方で,リハビリテーションにおいては脳性麻痺のリラクセーションチェア等あるいは脊髄損傷患者の殿部等の褥創発生の予防と関連する坐面圧の問題に関する研究等と限られている。
一方近年各種重心測定装置がリハビリテーションの分野に普及して来ており,重心移動の解析に関する報告を多く見るが,それらは立位時の重心動揺に開する問題あるいは歩行時に足部から床に加わる圧力を三次元方向で分析したものと重心点の移動に関するものであり,立位・歩行の研究の一環としてなされたものである。
作業療法においては患者に椅坐位を取らせて,作業を行なわせる場合が多く,この時作業療法士は患者の行う作業そのものの逐行状態と共に患者のとる坐位姿勢にも注意しながら訓練を実施するのが原則であり,椅坐位における作業療法の目的の一つとして坐位平衡機能訓練がある。
しかし,椅坐位における重心移動を主要課題として研究したという報告はリハビリテーションの分野にはなく,日本科学情報センター(JISCT)による国内文献調査及び米国National Library of Madicine(NLM)のMedlars Online(MEDLINE)による国外文献調査によっても椅坐位の重心移動を内容の一部に含む論文は2件のみであった。
そこで今回は椅坐位において坐台を一定角度左右方向に傾け 1.傾斜状態を一定時間持続させる静的傾斜刺激と 2.左右傾斜を一定周期で連続して繰り返す動的傾斜刺激を加える装置を作成し,健常成人において頭部と肩・躯幹の動き,体重圧と重心の偏位を測定した。
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