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教育講座
観察による歩行障害の診断
Diagnosis of Gait Disturbance by Observation
小林 一成
1
Kazushige Kobayashi
1
1東京慈恵会医科大学葛飾医療センターリハビリテーション科
キーワード:
肉眼的観察
,
歩行周期
,
正常歩行パターン
,
異常歩行
Keyword:
肉眼的観察
,
歩行周期
,
正常歩行パターン
,
異常歩行
pp.1077-1084
発行日 2020年11月18日
Published Date 2020/11/18
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はじめに
リハビリテーション医療の特徴の1つは,その帰結として,常に動作能力の改善を意識しながら行われる医療であることが挙げられる.そして,動作能力の中でも歩行の獲得は,リハビリテーション治療過程で最初にめざす大きな目標である.人間は二足歩行が可能になることによって,両手を自由に使うことができるようになり,それが今日の文明の発展につながった.また,二足歩行は人間生活における基本動作の1つで,人間の長い進化の過程で獲得したものである.二本の長い脚で重い頭と身体を支える一方で,絶妙なバランスをとりながら,それでいてきわめてエネルギー効率のよい移動方法として確立された.そして,われわれの生活環境は,基本的に二足歩行による移動を前提に構築されてきた.そのため,歩行が困難な場合の日常生活上の不自由さはきわめて大きい.
今日まで歩行評価にあたって,種々の計測方法が計測技術の進歩に伴って考案されてきた.しかしこれまでのところ,これらの計測が一般に普及したとはいえず,また肉眼的観察以上に簡便で,しかもすぐに治療に反映できる有効な評価方法は少ない.したがって,今日でもなお,歩行観察の重要性とその価値はまったく失われていない.
歩行は誰もが目にする見慣れた日常動作で,歩き方がどこかおかしいことは気づきやすい.しかし,それが単なる個人的な癖なのか,障害なのか,そして障害ならばどこに問題があるのかを判断することは難しい.
本稿では,歩行障害を観察するときに必要な基本的な知識と,多くの健常人でみられる“いわゆる正常歩行”の特徴について述べ,異常歩行パターンの観察ポイントと原因について記述する.
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