Japanese
English
特集 足の構造と機能
歩行における足部の発達
Development of the Normal Foot: Static and Biomechanical Approach.
須々田 幸一
1
,
松野 誠夫
1
Koichi Susuda
1
,
Shigeo Matsuno
1
1北海道大学医学部整形外科
1Orthopaedic Surgery, School of Medicine Hokkaido Uiniversity.
キーワード:
足部
,
床反力
,
歩行周期
Keyword:
足部
,
床反力
,
歩行周期
pp.801-805
発行日 1982年9月10日
Published Date 1982/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104811
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はじめに
人間の足部に関する解剖学的特性は,1743年Nicholas Andryによって記載されている.その中で足部の変形ないし異常は,静的な概念ばかりでなく,動的な概念によっても把握されるべきであると述べている3).
また一般的に足部は手と異なり精密な運動,機能を有していないため,ただ単に下肢を地上に連結しているだけの役目としてみなされてきた.しかし,発生学上においては,人間の手指は霊長類と基本的な形態は全く進化しておらず,その機能のみが変わったにすぎない.一方,足部は霊長類に特徴的である第一中足骨内反の状態とは異なり,第1中足骨と第2中足骨との間隔は狭くなり,握る,しがみつく,登る等の霊長類特有の機能は退化し,むしろ二足歩行に適した形態を示すようになる.
顕著な例としては,人間の足部は足穹窿を形成していることである.このような穹窿は他の霊長類にはほとんどなく,あってもごく軽い程度のものである.このように足部を発生史より眺めると手指と異なった修飾を受けていることがよく理解される.また現代人は,履物を装着する機会が多いが,これは長い生物の進化からみると,全く最近のことになる.このような認識に立って足部を考えることが足部の病的な状態の把握および治療に役立つと考えられる.発生途上の人間の足は,他の霊長類とは3つのことが異なる.1)横軸および長軸の両穹窿をもっている(人間のみ横軸穹窿があり霊長類は長軸穹窿はあるが軽度である).2)足部の安定性(靱帯組織がしっかりとしている).3)足は物を握らない.
以上の特徴を有する足部に関して,機能の発達を中心に述べる.
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