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教育講座
緩和ケア主体の時期のがんリハビリテーション診療
Cancer Rehabilitation and Palliative Care
辻 哲也
1
Tetsuya Tsuji
1
1慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室
キーワード:
終末期がん
,
悪液質
,
骨転移
,
ADL
,
QOL
Keyword:
終末期がん
,
悪液質
,
骨転移
,
ADL
,
QOL
pp.828-835
発行日 2020年9月18日
Published Date 2020/9/18
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- 参考文献 Reference
はじめに
がんのリハビリテーション診療は,「がん治療の一環としてリハビリテーション科医,リハビリテーション専門職により提供される医学的ケアであり,がん患者の身体的,認知的,心理的な障害を診断・治療することで自立度を高め,QOLを向上させるものである」と定義される1).がんサバイバーのquality of life(QOL)向上や社会復帰の支援を目的に,化学療法や放射線療法中・後の運動療法や有害反応への対応,悪液質や骨転移のマネジメント,緩和ケアが主体となる時期の症状緩和まで,その役割は拡大しつつある.
進行した病期のがん患者や終末期がん患者では,がんの進行もしくはその治療の過程で,さまざまな苦痛や精神心理面の問題を生じ,その対策として緩和ケアが必要とされる.身体活動面では,高次脳機能障害,摂食嚥下障害,発声障害,運動麻痺,廃用性や悪液質による筋萎縮・筋力低下,関節可動域(ROM)制限や疼痛,四肢長管骨の病的骨折,脊椎病的骨折や腫瘍の脊柱管内への進展による脊髄圧迫症状,四肢の浮腫などさまざまな機能障害が生じ,それらの障害によってactivities of daily living(ADL)に制限を生じ,QOLが低下してしまう.これらの問題に対して,身体機能や生活能力の維持・改善のため,リハビリテーション診療を行うことは,限られた余命の間のQOL維持・向上のために重要である.治療技術の進歩により,根治困難であっても担がん状態でがんと共存しつつ療養生活を行う患者の生命予後はますます延長し,生活能力の維持・改善を目的としたリハビリテーション医療の必要性はさらに高まるだろう.
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